個人でWebサービスをつくる人にオススメしたい「スロー開発」という哲学
2018年10月11日

数日前、「ネットプリント」という独自のカルチャーをアップデートするサービスを作りたい#1という記事を執筆し、Twitterで公開したところ、ありがたいことに何人かの方から好意的な反応があった。
心情としては「よし!すぐに開発しよう」と行きたいところではあるが、今回のプロジェクトでは個人や少人数で趣味の延長として開発を行う人向けに、「スロー開発」という概念の提唱と実践を行なっていきたいと考えている。
スロー開発の定義とメリット
スロー開発とは何か。これは僕が勝手に作り出した概念なんだけど、一言で説明すると「スピードにとらわれず地道に作っていこうぜ」という、趣味の延長でサービスを作る人向けの開発方針である。
なんであえてゆっくり作るの?バカなの?という疑問は当然わくだろう。
「ゆっくり作る」という逆手に取った手法を選ぶことによって、メリットも生まれるのでそれを説明したい。
- 1️⃣アイデアにオリジナリティが生まれる
- 2️⃣途中経過をアウトプットする時間が生まれる
- 3️⃣サービスづくりに必要なスキルがじっくり学べる
1️⃣アイデアにオリジナリティが生まれる
スロー開発のメリットを語る前に、そもそも多くのビジネスがスピード勝負になるのはなぜか?という話から入りたい。
その答えは明白で、類似サービスがあるからである。
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そもそも、人々が憧れを抱くWebサービスは、基本的に広告か営業に大金をぶっこんでチカラ技で拡大したものがほとんどということは知っておいた方がいいだろう。
普通に考えれば当たり前なのだが、起業家がVC(ベンチャー・キャピタル)からウン千万円、ウン億円と出資を受ける理由はそこにある。モノを作るだけなら金はたいしてかからないが、ライバルより先に多くの人々に認知してもらうためには莫大な金がいる。これが出資を受ける理由だ。
つまり一般的なやり方で、Webサービスで儲けたり一定以上のユーザーを獲得しようと思うなら、広告や営業のスピード勝負を選ばざるを得なくなる。「他社よりも質が高いサービスを作ったら勝手に広がる」というのはかなり幻想に近いので、そう思っているなら今すぐ目を覚ました方がいい。繰り返し言うが、広告と営業のスピードなのだ。そのために金と人数を一気にかける。
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この前提を踏まえた上で「スロー開発」のメリットを説明すると、ズバリ「スピード勝負を放棄した時点で類似サービスが存在しないアイデアしか選択できなくなる」ということだ。
競争相手が0人の徒競走なら、どれだけゆっくり走っても1位になれる。笑
スロー開発は、中途半端に誰でも思いつくアイデアでスピード勝負するよりも、誰もやらないアイデアを個人でゆっくり作ろうぜという哲学でもあるのだ。
2️⃣途中経過をアウトプットする時間が生まれる
一気に開発を推し進めるスタートアップ型のやり方とは正反対に、スロー開発を選択すると実装中の状況や途中経過をSNSやブログアにウトプットする時間を作り出せる。
いちいち経過をアウトプットするメリットは、制作段階でアイデアに興味のある人を巻き込めるという一点に尽きる。
開発を一瞬で終わらせお金と人をかけてユーザーを爆発的に増やしていく達成感を味わいたいなら、大企業やスタートアップに属していた方が圧倒的にいい。
一方で、ひとり・またひとりと興味のある人や将来のユーザー候補が増えていくゆっくりとした達成感を味わえるのは、スロー開発を選択した人の特権である。
実はこのjunk martを作るときも、(制作過程はアウトプットしていないものの)NewsPicksの番組でアイデアを見た人からファンレター的な応援メッセージをもらえたので、モチベーションの大きな助けにもになった。
(それがなかったら作るのが途中で飽きていたかもしれない。笑)
どちらを選びたいかはその人の性格にもよるだろうが、僕はこのやり方のほうが好きである。
3️⃣サービスづくりに必要なスキルがじっくり学べる
サービスを作りながらスキルアップに集中できるのも、スロー開発をオススメしたい理由の一つだ。
IT企業に属していたり、フリーランスの仕事をことがある人なら分かると思うのだが、納期が定められたスピード重視の開発では既に組織内にナレッジがある技術が選択されやすい。
個人で作っていても「早くしなきゃ」という意識があると、つい既に身についているスキルや言語を選択してしまいがちだ。
一方でスロー開発では、時間の縛りがないので自分の学びたい技術をゆっくり習得できる。
例えばエンジニアの人で「もう少しデザインができればなぁ」と思っているのであれば、チャレンジしてみてもいいのではないか。
僕はサーバーサイドが苦手(というかほぼできない)なので、今回のネットプリントのプロジェクトで習得に挑戦したいと思っている。
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ライター: 斉藤ノブヨシ